明和徒然日記

第28回 未完のモナリザ

誰もが知る名画「モナリザ」。
作者のレオナルド・ダ・ヴィンチはその出来栄えに満足することなく依頼主にも渡さずに生涯手元に置いて修正を加え続けていたという。

小生のような素人にはダ・ヴィンチは何が不満だったのかさっぱり理解できなかったのだが、最近はその気持ちが少しだけ分かるようになった。
というのも今まさに自分が執筆しているこの「明和徒然日記」もテーマが思い浮かんだら短時間で一気に書き上げているのだが、それはあくまで初稿であって実はその後が長く、締め切りまでの間に何度も推敲を重ねているのだ。
分かり易い内容になっているか、文末表現が重なっていないか、文章のリズムが良いかなどをチェック。
更には歩いている時や電車に乗っている時、風呂に入っている時など全く関係ないことをしている時にふと思いついた言い回しに修正したり、時には大幅に書き直したりしていて、締め切り日になって仕方なく「校了」とするまでずっと修正を重ねている。
それでもホームページに掲載された後、「ああ書けば良かった。こういう表現にすれば良かった。」と後悔する事しきりである。
その点ではこの「明和徒然日記」も大げさに言えば永遠の未完の作品と言えなくもない。

「ダ・ヴィンチと同列に語るなどおこがましい!」というお叱りの声が聞こえて来そうなのでこのくらいにしておくが、当社のような運輸会社にはこれとは比べ物にならないほど大きな永遠の未完のテーマがある。
それは「安全」の追求である。
どんなに注意を払っても事故やトラブルは起きてしまう。
原因を究明して対策を徹底しても今度は別の要因で事故が起こる。
極論すれば飛行機なら離陸しなければ、列車や車なら発車しなければ、そして船なら出航しなければ事故は起こらない。
しかしそれでは運輸会社としての責務を果たすことができない。
起こりうる事故やトラブルの可能性を極限まで低減させて未然に防がなくてはならないのだ。

今日もドックでは安全監督が船の建造や整備に汗を流している。
岸壁に係留している船に安全担当者が訪船して安全会議をしている。
そして何よりも実際に航行している船では航海士や機関士が万全の注意を払って運航している。
全ての努力が「安全」という永遠のテーマの追求のために払われ、その努力は今日も明日も継続され、そして終わりは無いのである。

筆者 佐藤兼好

未完のモナリザ(AI生成によるイメージ画像)

未完のモナリザ(AI生成によるイメージ画像)