明和徒然日記
第27回 新幹線でパチパチ、タン!
岩手県のとある学校で船員志望の学生に対する会社説明会をおこなうために東北新幹線に乗車した時の事である。
東京駅を出発して暫くすると通路を挟んだ斜め前の席から「パチパチ、タン!」、「パチパチ、タン!」という音が途切れなく聞こえ始めた。
音のする方向を見ると、40歳前後のいかにも「できる男」風の男性が真剣な顔つきで座席のテーブルに置いたパソコンを叩いている。
新幹線の走行音は規則的なので特に気にならないのだが、「パチパチ!(文字入力する音)、タン!(ENTERキーを叩く音)、トントントントントン(カーソルを移動させる音)」というキーボードを叩く3種類の音が不規則に容赦なく耳に飛び込んで来るので気になって仕方がない。
大声で騒ぐグループやイヤホンから漏れ出るシャカシャカシャカという大音量の音漏れなどはとても耳障りなのだが、この「できる男」風の「パチパチ、タン!」もなかなかのものである。
その男性も実際は有能なビジネスマンなのだろうが、見ようによっては今までさぼっていた学生が試験の前の晩に必死に一夜漬けで勉強しているようにも見えてしまう。
少々厳しい言い方をさせていただくと事前に十分な準備を整えて、余裕をもって事に臨み、更には周囲への配慮も忘れないのが本当の「できる男」というものではないだろうか?
思い起こせば携帯電話の出始めの頃には「俺はケータイ持ってるぜ!」と言わんばかりに新幹線の座席に座ったまま携帯電話でこれ見よがしに話す(しかも殆どが大した内容ではない)乗客が大量発生して、その結果、車内での携帯電話での通話はご遠慮下さいという風潮になったものだ。
このパチパチ音が迷惑だと感じる人が多くなったためかどうかは分からないが最近では新幹線の車内で仕事をする人たちのためにビジネス専用車両も用意されている。
という訳で、「できる男」風の男性が仙台駅で降りた後、たいして「できる男」でもない小生は周りに迷惑をかけないように、静かに居眠りをして乗換駅の盛岡へと向かったのである。
筆者 佐藤兼好

できる男のパチパチ、タン!(AI生成によるイメージ画像)















