明和徒然日記
第23回 スターボードで右側通行
言うまでもなく日本では自動車は左側通行である。
明治時代に英国の制度に倣って決められたのだが、実は自動車の左側通行は世界的には少数派であり米国を始めとして多くの国が右側通行を採用している。
どちらが優れているのかなどと比較するのは意味がないことだが、はじめから万国共通にしておけば輸出する際にこの国は右ハンドル、この国は左ハンドルなどと造り変える必要も無くなるし、海外で自動車を運転する日本人や日本で運転する外国人が戸惑うことも無かったのにと思う。
鉄道も日本では自動車と同じく左側通行だが海外には右側通行の国もあり、更には自動車は右側通行で鉄道は左側通行の韓国、自動車は左側通行で鉄道は右側通行のインドネシアのように自動車と鉄道が左右逆の国もある。
一方、船は来島海峡などの一部の例外を除いて万国共通で右側通行である。
昔の船は大きなオールのような形状の舵(STEER)を人力で動かしていたので右利きの人が多い右側に舵が装着されていた(蛇足だが右舷のことをSTARBORDと呼ぶのは元々STEERBOARDと呼んでいたのがはじまりである)。
そのために視界が確保しやすい右側通行になったといわれているが、自動車や鉄道と違って船は世界をつなぐ海を航行するため必然的に万国共通で右側通行になり、現在では「海上衝突予防法」で右側通行と厳密に定められている。
ところでエスカレーターはどうだろう。
規則ではないが「急ぐ人のために片側を空けましょう。」という譲り合いの精神から発生したといわれる片側空けのマナー。
最近では逆に事故防止のためエスカレーターでは歩かないことが推奨されているが、日本人特有の人の迷惑にならないようにという気持ちから片側を空けてしまう人が多いためか、あまり守られていないようだ。
全国的にはエスカレーターの左側に立って右側を空ける人が多いと思う(左手は手摺で右手は荷物を持つから?)が、大阪などの関西地区ではなぜか右側に立って左側を空ける人が多い(関西だけ左利きの人が多いとは思えないが)。
そのため新大阪駅の新幹線ホームから新幹線改札に降りる際はエスカレーターの左側に列ができ、乗り換えの在来線や地下鉄のホームに降りる際は右側に列ができるという珍現象も発生している。
国によって自動車や鉄道の右側通行と左側通行が違っていたり、日本国内でさえ地域によってエスカレーターに立つ位置が左右逆であるのに、船が万国共通で右側通行であるのは海上を安全に航行するための昔からの船乗りたちの知恵だったのである。
筆者 佐藤兼好

画像右上に見える他船と右側通行ですれ違う当社船舶
(愛媛県八幡浜沖にて)















