明和船団オーナーズ

Vol.3 田原汽船株式会社 代表取締役社長 田原 範男 さん

明和海運では、自社で所有している船舶(4隻:注)と船主(オーナー)から借りて運航している船舶(13隻:注)によって、明和船団を構成しています。(注)2012年9月現在
このコーナーでは、明和海運のファンネルマークを付けた船舶を所有し、荷主様のご要望にお応えすべく、高い運航品質の維持に取り組んでいる明和船団のオーナーを数回に分けてご紹介します。

 

【会社概要】

会社名
: 田原汽船株式会社
所在地
: 岡山県備前市日生町寒河3995番地
社 長
: 代表取締役社長 田原 範男
所有船舶
: 金栄丸(きんえいまる)

~オーナーへの道~

昔(23歳)今(71歳)

私の家は、祖父の代から日生(ひなせ)で海運業を営んでおり、その様な環境 で育ったため、家業を継ぐ時は、他にやりた事があったという訳ではなく、自然体でそれを受け入れたというのが正直なところです。
小さいころ頃から家業を継ぐことを意識していた訳ではありませんが、私の親が私が継ぐようにレールを敷いて行ったようです。

海運業は祖父の代から始め、当時は犬島で採れた石を木帆船に積んで大阪まで運んでいました。
 父の代になると、初めは片上湾(岡山県備前市)からレンガを積んで広畑まで運んでいましたが、私が物心つく頃には片上湾の奥で採れる硫化鉱を宇部まで運ぶようになっていました。
 私は高校を卒業(昭和34年)してすぐに船に乗りましたが、その頃はまだ木帆船でした。
昭和39年の法人化と同時に新造した貨物船で、木帆船から鋼船への転換を図り、製鉄の洗剤、コイル、H鋼等色々なものを運送するようになったのです。
木帆船から鋼船への転換によって、だんだん昔の考え方が事業運営に合わなくなってきたこともあり、父から家業を継ぐよう言われ社長になりました。昭和54年5月、私が38歳の時でした。
社長になっても暫くは船に乗ったりしていて、特段変わったということはなかったのですが、昭和57年に私の代になって初めてLPGの中古船を購入し、鋼船(カーゴ)からタンカーへの転換を図りました。その後、2隻のLPG船の内、1隻を売却してケミカル船(近海輸送)を購入し、その後、重油船への切り替えを行い、市場動向に応じた事業の転換を図ってきました。 重油船の船齢が古くなり売却した折に日生農協の倒産があり、そのタイミングで購入したのが今の金栄丸で、それを契機に明和海運との取引を開始しました。平成14年10月のことであり、今年の10月で10周年を迎えます。

~大切にしていること~

船員がいなければ、事業を運営することはできませんから、船員との「和」というものを大事にしています。
当社の船舶が近くの港に戻れば、必ず訪船するようにしています。船員と直接話をすることが何より大事です。
私がたまにしか行かないようであれば、船員は言いたいことも言いにくいでしょうが、頻繁に顔を出せば色々な話が出来て、その中で本音も聞けます。
「金栄丸」は中々近くに来れないので、ドックに入った時は必ず行き、ドック期間中、1週間程度ずっと船員達と一緒に過ごします。

船員達と直接顔を合わせて、腹を割って話ができる環境を作ることをずっと心掛けています。

~オーナーってどんな人?~

見たとおりのこのままの人です。
元船員ですから、飾り気も何もなし、裏表もありません。ただ、一度熱中すると、ずっと続けるタイプです。
今まで元気でいますが、もう年ですから、今は健康管理に一直線です。散歩とか、ゴルフの打ちっぱなしとか、食事は野菜中心ですし、サプリメントも飲んでます。本、テレビ、新聞等を見て、良いことがあれば、すぐに試してみる徹底ぶりです。
散歩は日課となっていて、毎日1時間30分程度、家から海の方へ行って、山道を通って、赤穂市ギリギリの境界線まで行っているようです。

朝5時には家を出て6時30分頃には戻ってきます。毎日、時間を決めて散歩をしています。
ゴルフは月2~3回のペースですが、打ちっぱなしは毎日行っています。練習をしないと太ってしまうからだと言っています。
とにかく、体重管理を徹底していて、体重は毎朝・毎晩、お風呂から上がる度に測っています。骨太な体質で、筋力に衰えは感じませんが、いくら気を付けても痩せられない体質なのです。
男2人、女2人の4人の子供に恵まれましたが、本人は長男か次男に家業を継がせたかったようです。
ただ、その頃、市況が一番悪い時期で、代替建造ができるかも分からず、むしろ殆どできない状況でした。
船員もだんだん少なくなってきていたこともあり、もうこの辺にしておかないと、息子に跡を継がせたものの、会社が維持できなくなる環境の中に追い込んでしまう危険があったので、自分の体が自由になる内は自分がやると決心したようです。
こういった経緯もあり、本人としては体が全ての基本であり、健康管理には十分気を付けているのです。

~オーナーさんのとっておき!~

瀬戸内海の天然の良港、日生港が育んだ極上の食材、イイダコがお薦めです!

イイダコの大きさは5~20cmとタコの中でも小型サイズ。
腕の付け根に2個、目と目の間に1個の金色の紋があるのが特徴です。
「イイダコ(飯蛸)」という名前の由来は、胴部(頭に見える部位)にぎっしり詰まった小さな米粒形の卵が米飯に見える、またはその卵の食感が飯粒のようだからという説があります。

波打ち際から水深10cmほどまでの、岩礁や転石が点在する砂泥底に生息しますが、波の穏やかな内湾的な環境を好み、瀬戸内海で日生諸島を衝立(ついたて)代わりにした天然の良港である日生港はイイダコの特産地となっています。
近年は豊漁で、秋から冬にかけて大量に漁獲され、潮の良いときにはイイダコ釣りの船で賑わいます。産卵期である冬から春にかけて、胴の内部に卵をびっしりと抱えたメスが珍重をされていて、煮付けにすれば、もちっとした独特の味わいがあり、歯応えのある身と、濃厚な旨味のある卵は美味で、お酒にも良く合います。
卵がなくても茹でて、酢醤油、ねぎ、わけぎとの酢味噌和えにしたり、郷土料理の「芋蛸(いもたこ)」として、里芋と一緒に煮付けたものも美味しいです。その他、おでん、鍋物、刺身、酢味噌和え、炊き込みご飯(たこめし)、から揚げ、天ぷら等、色々な味が楽しめます。食べごろは2~3月頃で、その時期は特に柔らかくて美味しいです。ただ、食べれる時期が限定されているので、あまり知られていないようです。日生にお越しの際は、是非、一度ご賞味ください!