明和徒然日記
第7回 当たり前
夏は暑い、冬は寒い。
日本では当たり前である。
しかし、最近はこの当たり前の事がテレビの報道番組などで頻繁に取り上げら
れているような気がする。
時には次のような感じでトップニュースになる事さえある。
日本有数の暑さを誇る町、埼玉県熊谷市の街角、陽炎ゆらゆら揺れる昼下がりにハンディ扇風機やうちわで扇ぎながら街行く人に「どうですか、暑いですか?」などとレポーターが声をかける。
「暑くて…もう溶けちゃいそうですぅ。」などと予定調和的な答えが返ってくる。
(溶けちゃいそうという割には何となく嬉しそうだが・・・)
一方、東京でも雪が降りそうな寒い冬の夜には定番の八王子駅前から「都内でも雪がちらつき始めて皆さん家路を急いでいます!」などと中継している。
同じ「都内」でも都心よりは少し離れた周辺部の方が雪の映像を撮れそうだからだろうか。
(あくまで個人の感想です)
もちろん近年増えてきた夏の「危険な暑さ」の日には熱中症の注意喚起、冬の積雪が予想される日にはスリップ事故や交通マヒ、歩行者の転倒防止などの点で重要な報道であることには間違いないし、その情報によって救われる人もたくさんいるだろう。
当社のタンカーでも船員が荷役作業をする船の甲板上は夏には眩暈がするほど暑くなるし、厳冬期の北海道向けの航海では甲板上のバルブが凍って破裂したことがある。
それでも「夏に雪が降ったり冬に気温が30度超えたりしたらそれこそ大事件だが、夏に暑い、冬に寒いなどと当たり前の事を飽きもせず何度も放送するなんて、もっとちゃんとしたニュースはないのか?」などと思ってしまうのは、いささか捻くれた考えなのだろうか。
しかし、もし仮に大地震や大津波、戦争、殺人事件、放火事件など暗く悲惨なニュースばかりのオンパレードだったらどうだろう。
特に船舶事故や工場の爆発事故などがトップニュースになった日には、たとえ当社とは直接関係のない会社や海外の出来事であっても何となく落ち着かない気持ちになる。
だから「暑い」「寒い」がニュースで大々的に取り上げられるということは、少なくともその日は世の中が割と平和だったという証拠なのかもしれない。
そう考えると見飽きた「暑い」「寒い」のニュースも少しは有難く思えて来る。
写真:国内初の船舶甲板用冷房設備(涼霧システム)(明和丸にて)
(筆者:営業部 佐藤兼好)