船の旋回には、舵に働く揚力だけでなく、船体自体に働く揚力も影響します。 舵を切って(図1)、船が回頭し始めると、船体に対する相対的な水流にも迎角が生まれ、揚力が働きます(図2)。すなわち、船体自体も大きな舵で巨大な船の針路を変えられるのは、この船体に作用する揚力の力が大きい。
船は旋回する際、右に曲がるように舵を切った船は、船首を右に曲げつつ、舵の揚力によって今までの針路からやや左に横流れします。(キックという)その後、船体にも揚力が作用すると、船は弧を描いて進みます。舵を切り続けたときに、いかにすばやく曲がることが出来るかという性能を旋回性といい、旋回性の高い船は低い船よりも、小さな(半径の短い)弧を描いて旋回します。
また、旋回性とともに重要な船の性能が、どれだけ直進を維持出来るか表す保針性(針路安定性)です。波や風が強い条件下の航海では、頻繁に舵を切って針路を保たねばなりません。これを当舵といいますが、保針性の低い船だと当舵の頻度が上がり、それによって抵抗も増加するため燃費が悪くなります。
実際の保針性能は、舵を交互にとって船をジグザグに走らせるジグザグ試験(Z試験)によってチェックされます。
旋回性と保針性はともに船の操縦性能において重要な性能ですが、この2つの性能は両立しません。一般的に旋回性が高い船は保針性が低く、保針性が高い船は旋回性が低いといった場合が多いため、造船設計では船の用途や航路に合わせてバランスを配慮しています。