船は水に浮いており、常に気象・海象の影響を受けます。大型船でも、まるで風船のように風や潮に流されます。 気象・海象の基礎的な知識を以下に記載します。近年では、きめ細かい情報を容易に入手できるようになりましたが、そこから得られる情報を誤って解釈すると事故・ トラブルに陥る可能性が高く注意を要します。
(1)風浪とうねり
①波の基本的表現
波は、下図にしめすように、波長(波の山から山、または谷から谷までの水平距離)、波高(波の山から谷までの鉛直距離)、周期(波の山または谷が通過してから、次の山または谷が通過するまでの時間)、波速(波の山または谷が進む速さ)、波の向き(波の進んでくる方向)で表現されます。
②風浪
風によって起こされる波を風浪といいます。風浪の特性を表すのに、有義波があります。有義波とは、観測された波のうち、波高の高い方から全体の3分の1までを取り出して、これらの波高と周期をそれぞれ平均したものです。
風浪が発達する場合、風速、吹走距離と吹続時間の3つの要素が関係しています。風速が大きく、吹き渡ってくる海面が広く(つまり吹走距離が大きい)、風の吹いている時間が長ければ長いほど風浪は大きく発達するといえます。
③うねり
風浪の発生域を離れ遠くまで伝わってくるもので、規則的でなめらかな周期の波のことをうねりといいます。
(2)潮汐
下図に示すように、月に近い側で引力が大きく、また月と反対側では遠心力が大きくなるため海水が集められ月の方向と90度離れた側では、海面が押し下げられます。地球は自転していますので基本的に1日2回ずつ高潮と低潮が地球上の各地点を通過していきます。地球上で実際に見られる潮汐は、不規則な海陸分布や水深等の影響のため、複雑に変化します。地球は月と太陽の影響で起潮力が生じますが、月は地球との距離が近い為に太陽の2倍影響を受けます。
(3)潮流
潮流とは、潮汐による海面の昇降に伴う海水の水平方向の移動を言います。潮流は広い大洋では一般に微弱でありますが湾口や狭い水道などでは強く操船に影響を与えます。例えば瀬戸内海西部の来島海峡や徳島県と淡路島の間にある鳴門海峡では最強10ノットの潮流があります。