明和海運株式会社

60th anniversary

海運豆知識

第137回

帆船と船首像(フィギュアヘッド)

洋の東西を問わず、船の船首を飾る行為は古くから一般的な慣わしでありました。紀元前5000年のエジプトの古墳でも、勝利を表すシェロの葉を飾った船を描いた花瓶が出土しています。
西洋(ヨーロッパ)で船首像が芸術的に花開いたのは、大型帆船の造船技術が進んだルネサンス以降で、かつてフランスでは装飾性・芸術性を磨く 為造船所に彫刻学校を併設するほどで、当時は海の神に対して船の安全を願い海神を喜ばすような像を船に積んでおかなければならない宗教的な側面と船が安全な航路を進むためには船自体に目が必要であると考えられ、獅子、鷲、竜、イルカの他、神獣・幻獣の類(たぐい)をモチーフに船首像が盛んにつくられました。
また、ローマでは、ローマ神話の海神・ネプチューンをなだめる生け贄の象徴として船主や船長の妻や娘をかたどった船首像の歴史も残されております。
そのような中で一般的に女性像が定着したのは17世紀カリブ海に海賊が出没してからで当時岩礁地帯航行中に座礁が多発、これはセイレーン(ギリシャ神話に登場する海の怪物)の美しい歌声が航行中の船員を惑わし針路を 狂わせたことが原因であると考えられ、これを阻止するべく、その影響を受けない女性を模って船に乗せたのが始まりといわれております。
一方で日本における船首像は、11世紀に貴族の遊覧船として生まれた竜頭鷁首(りゅうとう-げきしゅ)などが見られますが、ヨーロッパのように大帆船の時代を経ないまま開国、当時主流であった洋式大型蒸気船を学んだせいか、国内において船首像文化はヨーロッパほど定着しなかったようです。
国内現役で船首像を飾る大型帆船は、1930(昭和5年)年建造の帆船「初代日本丸」「初代海王丸」の後を継いだ航海練習帆船「日本丸」「海王丸」であり、それぞれ「藍青(らんじょう)」「紺青(こんじょう)」という女性像が 船首に飾られております。
船首像文化は帆船が主流であった時代に長期に渡り繁栄してきましたが、巨大な木から彫られ船体の最前部に取り付ける船首像は、船の航行性に悪影響を及ぼすこと、また創作費用が高い等の理由から19世紀後半蒸気船が帆船にとって代わると徐々に下火となり終焉を迎えました。

藍青
【日本丸船首像「藍青」】
地球上の全ての生物の生みの親・育ての 親である「わだつみの慈母」を意味して いる。
紺青
【海王丸船首像「紺青」】
藍青の妹。紺青の持つ笛は、嵐を鎮め、 実習生、乗組員に嵐を乗り切る勇気を 与え、さらには人々を幸せにする力を 持つことを願って創作された。