翼が固定され、ピッチの変わらないプロペラを固定ピッチプロペラ(Fixed Pitch Propeller=FPP)と言いますが、固定ピッチプロペラでは、船の前進・後進時の加速・減速は回転数を加減し、後進時はプロペラを逆転させます。しかし、特に大型船の場合は毎回主機の回転を調整するのは、操作が大がかりなうえ、主機に負担がかかります。これに対しピッチ(翼)の角度を自由に変えることの出来るものを可変ピッチプロペラ(Controllable Pitch Propeller=CPP)と言います。
この可変ピッチプロペラはプロペラの回転方向と速度を変えずに、ピッチ(翼)の角度を制御することによって速度調整や後進・停船を可能としており、出入港や離着桟(岸)の操船にすぐれています。
船には車のようなブレーキが無く、緊急時、衝突を避ける際は全速前進から全速後進へ操船します。このとき、固定ピッチプロペラの船では、主機を一度停止させて逆回転させる必要があるため、時間がかかり停船までに船体の長さの10倍以上の距離が必要となります。その点、可変ピッチプロペラの船の場合、船体の6倍程度の距離で停船できるため現在は大型船を中心に広く使われています。
なお、小型内航船では主機関の操作が大型船と比較して簡素であり、またプロペラ解放検査時等に伴う整備費用が高価であることから可変ピッチプロペラを採用する船は少ない傾向にあります。小型内航船では主として主機関の後部に逆転減速機を備え、主機関クランク軸の回転方向を変えることなくプロペラ軸を正逆転させ、前後進を行う方法が多く用いられています。