明和海運株式会社

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海運豆知識

第96回

現図と撓鉄(ぎょうてつ)

船体の加工は、まず素材の鋼板や鋼材に切断する線や、曲げたり他の部材を取り付けたりする目印となる線を書き込むことから始めます。
これをマーキング(marking)と言います。船の設計図は縮小されていますので、昔は手作業で一度原寸大に書き直した図(現図)を作り、それを鋼板に写していました。現在では、コンピューターが使われ、NC(Numerical Control 数値制御)によりマーキングと切断が機械で自動的に行われます。
船体は水の抵抗を減らすために、美しい流線型の非常に複雑な三次元曲面で構成されています。曲面を平らな鋼板から切り出すためには、三次元の曲面を二次元に展開する作業が必要です。この製図法は、一般の学校では教えていない特殊な技能ですが、現図作業がコンピューターに移行したため、この技能が製造の現場から失われつつあるのが実態です。

切断した部材を三次元曲面に曲げていくのも困難な作業です。自動車のボディなら1㎜程度の薄い鋼板で、大量生産なのでプレス加工で曲げられますが、船の場合はほぼ一品生産である上に厚いところでは10ミリを越すような鋼板だからです。
具体的には、鋼板をガスバーナーで点や線状に焼きながら、ホースで水を掛けて冷やすことで思い通りの曲面に曲げていきます。この作業を撓鉄(ぎょうてつ)と言いますが、非常に特殊かつ高度な職人芸とも言える技能で極めて複雑なノウハウです。撓鉄をこなせる現場工は高齢化が進んでおり、現在も機械化が困難なため速やかな技能の伝承が求められています。