明和海運株式会社

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海運豆知識

第87回

ISMコードについて

ISMコードとは、1993年11月IMO総会において、SOLAS条約(海上人命安全条約)第IX章として採択
された決議のことをいいます。既に弊社海運用語に掲載済ではありますが、ISMコード制定の経緯等、より詳細な内容についてご説明致します。

(1)ISMコード制定の経緯

ISMコードは、1987年3月「HERALD OF FREE ENTERPRISE」号(船種:フェリー 船籍:英国)が船首部ランプウエイを解放したまま出港、その後転覆し188人が亡くなる悲惨な海難事故を契機に、英国が中心となって制定された船舶管理のための規則であり、当時SOLAS条約に取り入れることが提案されましたが、時機が早すぎるとして成立しませんでした。
その後、再度船舶の安全運航と海洋汚染防止について検討が加えられ、1993年11月4日IMO第18回総会においてSOLAS条約に取り入れられることが決議・採択され、1994年5月のSOLAS条約締結国会議において、SOLAS条約附属書に第Ⅸ章を新たに設けISMコードを強制化し、適用する旨の条約改正が採択されました。1998年7月以降、順次このISMコード適合証書の備え付けが義務付けられ、2002年7月1日より国際航海に従事する総トン数500トン以上の全ての船舶に適用され、今日に至っております。
なお、国内においては海上人命安全(SOLAS)条約を適用する必要のない船舶及びその管理会社につい ては、ISM コードの適用は求められてはありませんが、国内荷主の一部が安全運航体制の確立を内航事業 者に求められたことから ISM コードに準拠した認証の取得を求める動きが顕著になってまいりました。
このため国土交通省(JG)及び日本海事検定協会(NK)が主体となって国内の内航海運業者のために任意 ISM が運用されております。

※ランプウェイとは、船の前後にランプウェイと呼ばれる橋をのばし、ランプウェイを渡って直接トラック、自動車等が船内に入り、貨物を積みおろしする荷役設備のこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%88%E3%81%95%E3%82%932000

(2)ISMコードの特徴

IMOは、従来から設備・構造(ハード要件)の基準を作ってきました。しかし、海難事故の原因は、概ね80%が「人的要因」によるものといわれ、海難事故防止の為には、船舶の安全運航を確保する体制を構築することが最も重要であると考えました。そのためには船舶だけではなく陸上の管理部門も含めた全社的な取組み、すなわち、安全管理システム(ソフト要件)が必要であるとの判断に至り、ISMコードが制定されたのです。
1994年にIMOにおいて採択されたSOLAS条約には、新たに「船舶の安全運航の管理」が第9章として追加され、その中に「会社はISMコードの要件を満たすものでなければならない」と規定されています。この規定は1998年1月1日から日本国の「船舶安全法施行規則」の第2章の2に規定され施行されています。
従来、「一旦、港を離れると何がおきるか分からない」という伝統的な考え方から、船内におけるあらゆる管理体制の確立は、船長個人の責任により行われ、マニュアル的管理は不適当とされてきました。しかし、ISMコードでは、管理責任を会社におき、船主または船舶の安全に関して責任を有する者(会社)に安全管理の実施を義務付けたのです。このことは革命的な変化であると考えられます。
具体的には、会社に対して、安全管理システムの策定・実施、陸上担当者の選任、安全運航マニュアルの作成及び船舶への備付け、緊急事態手順の確立、船舶整備手順の確立、内部監査手順の確立、リスク管理手順の確立等の作成を要求しています。また、船長に対して船内における安全管理制度の位置付け、主管庁による安全管理システムの審査などにより、その実効性を担保するよう要求しています。

【ISMコードと他条約との関連図】
ISMコードと他条約との関連図