明和海運株式会社

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海運豆知識

第102回

カーゴタンクの命「ステンレス」について

ひと昔前まではタンクの鉄製の壁に亜鉛ペンキを施したコーティング船が主流でしたが、昨今のケミカルタンカーは、ステンレス鋼で造られています。酢酸等の強い酸の積み荷にはステンレス鋼のタンクが必要とされることに加えて、揚げ終わり後の洗浄については、コーティング船に比べ洗浄がし易く、乾燥も容易になりました。今回はケミカルタンカーのカーゴタンクで採用されるステンレス鋼についてご紹介したいと思います。

まず、ステンレスとよく耳にするかと思いますが、ステンレスの意味は英語で「Stainless Steel」と言い、“着色(変色)しにくい 鋼”という意味です。日本工業規格の定義では、炭素を 1.2 % 以下、クロムを 10.5 % 以上含み、耐食性を向上させた合金鋼をステンレス鋼と定義しています。ステンレス鋼は鋼材のJIS規格だけでも100種類以上の鋼種があり、これら数多くの種類のステンレス鋼がそれぞれ適した用途に使い分けられています。
名前の示す通りステンレス鋼は一般の鋼に比較すると極めてすぐれた耐食性を有する素材ですが、特定の環境、使用条件の下では「錆びる」ことがありますので正しい使い方をする事が大切です。ここではケミカルタンカーで採用されている2種類のステンレス鋼をご紹介します。

SUS304
クロムとニッケルを成分に含むオーステナイト系ステンレスの代表格です。ケミカルタンカーでは最もよく使われているステンレス鋼です。基本的な性質は、他のステンレス鋼との比較で見た場合、耐食性に特化したタイプには及ばないものの、大気中での耐食性、耐酸性、耐孔食性、隙間腐食への耐性といった錆や腐食に強い点が挙げられます。(オーステナイト=鉄に炭素や合金元素などの他の元素が固溶したもの)

SUS316
ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS304のニッケル(Ni)含有量を高め、更にモリブデン(Mo)を添加することで、耐食性を上げた鋼種です。SUS316に添加されたモリブデンには、破壊された不動態皮膜を修復する機能があるため、モリブデン(Mo)を含有していないSUS304よりも耐食性が良く強酸類等を輸送するケミカルタンカーに採用されています。(不動態皮膜=ステンレス鋼は表面に薄い耐食性を持つ膜があるため美しい状態が保てる)

各元素含有率

SUS304 ニッケル (8 – 10.5 %)、クロム (18 – 20 %)
SUS316 ニッケル (10 – 14%)、クロム (16 – 18 %)、モリブデン (2 – 3 %)

※末尾に(L)が付く場合はLow carbonを表しています。カーボンが多いと耐食性が低下する。

新造ピカピカのステンレスタンク<br />(SUS304 製)”  /><figcaption class=新造ピカピカのステンレスタンク
(SUS304 製)
23年使用したステンレスタンク<br />薄く茶色に発錆(SUS304 製)”  /><figcaption class=23年使用したステンレスタンク
薄く茶色に発錆(SUS304 製)

このように万能で優れた性質を持つステンレス鋼は船舶のみならず、食卓から原子力、宇宙開 発まで用途は広範囲に渡っています。各用途により耐食性、耐熱性、強度など、必要とされる性能 は多様であり、それぞれの目的に合致したステンレス鋼が選択され使用されています。