石油化学製品のイロハ

第1回 ナフサ(石油化学製品のご先祖様)

石油化学製品は、もともとは石油や天然ガスから幾重もの生産工程を経て、自動車の部品や、衣服の生地、薬品やお惣菜のトレーなど私たちの生活に必要な最終製品へと姿を変えていきます。
このシリーズではそのような石油化学製品について、コテコテの文系頭の筆者が難しい化学式や計算式などは省いて、分かる範囲で少しだけご紹介していきます。

主に中東など遠く海外から運ばれてきた黒くてドロドロの原油を製油所の常圧蒸留装置(トッパー)で蒸留・精製すると、沸点の違いから石油ストーブの燃料やジェット燃料となる灯油留分、ディーゼルエンジンの燃料となる軽油留分、船の燃料や発電所の燃料用に使用される重油等へと分かれていきます。

それらの留分のうち沸点範囲が30℃から170℃くらいの比較的低い温度範囲で得られる軽質留分がナフサ・ガソリン留分と言われるものです。
更にその中で沸点が約100℃以上のものが重質ナフサで、これは改質を加えることによってガソリンとなり自動車用燃料として出荷されています。
一方、沸点が100℃以下のものが軽質ナフサです(別名を粗製ガソリンとも言う)。
つまり、ナフサは原油から精製されるもののうちLPガスを除いて最も沸点が低い、最も軽い留分であり、いちばん最初に抽出されるものなのです。
そしてこのナフサがすべての石油化学製品の出発点であり、その後のさまざまな中間石油化学製品を経て私たちの身近な製品(最終製品)へと姿を変えていくのです。
例えて言うならば、ナフサを親として子、孫、曾孫(ひまご)、玄孫(やしゃご)、来孫(らいそん)、昆孫(こんそん)と世代が下っていくように、石油化学製品は次から次へとその性質や用途を変えながら最終的に形ある製品として私たちの日々の暮らしを支えているのです。
中には、「えっ、これってもともとは石油だったの?」と知らなければ驚くようなものもあり、そのような意味ではナフサは私たちの身の回りにある様々な製品の遠いご先祖様と言えるのかもしれません。

なお、日本では当初の原油の量から灯油や軽油など他の石油製品として利用されている分を差し引くと石油化学用ナフサとして利用されるのは全体の1割程度しかなく、不足分は海外からの輸入に頼っています。
次回からはこのナフサから出発した様々な石油化学製品がどのような形で私たちの身近な製品となっているのかをご紹介していきます。

  • 製油所の常圧蒸留装置(トッパー)
    この装置を通ることにより原油はナフサをはじめとした様々な留分に分けられて行きます。
    製油所の常圧蒸留装置(トッパー)
    画像提供
    JXTGエネルギー株式会社